2007年1月5日-新年初フライト


マルメの駅でせつなくもあたたかいお土産をもらった私は、空港へ向かう電車の中から呆然と外の景色を眺めていた。
私の向かいにはベビーカーをひいているインド人の若い夫婦が立っていた。
その若い夫婦はとても仲睦まじく、控えめだけれどもとても幸せそうに見えた。
ベビーカーに乗った男の子は(1歳くらい?)真っ黒い目がくりくりとしてすごくかわいい。
穴があくほど私を見つめるので、にこっと微笑んだらその子はぱあっと笑って小さい両手で顔を隠してしまった。
この日はとても晴れて、デンマークとマルメを結ぶオーレスン大橋から見える海峡の水面がキラキラと輝いていた。
いつかこの橋をバスでゆっくり渡ってみたいなぁとぼんやり思う。
次の駅"MALMO SYD"に着くと、どっと人が乗ってきた。
私が立っているドアの反対側のドアが開いたので助かったけど、この電車がこんなに混んでいるのは初めて見た。
もちろんみんな空港へ向かうので、一人当たりの荷物のおかげでさらに狭い。
そう、空港に向かう電車が満員だということは、空港は…嫌な予感…。

デンマーク空港の駅に着くと、たくさんの人がホームになだれ出て地上の空港内へと急ぐ。
私は荷物を動かすのに手間取るし、周りに気を使うのも面倒だったので、ホームに置いてあるカートに荷物を乗せ、少し人が引いてからエスカレーターへ向かった。
予感通り、チェックインカウンターは長蛇の列。
いつもは列のロープからはみだしているくらいの混み具合なんだけど、このときはさらに列は延びて、延びて、延びて、出口に近いトイレまで列が続いていた。
もう、思わず笑っちゃうくらい。
マルメ駅を出発した時とは違う意味で呆然としていると、トイレの前の、以前は雑貨屋さんがあった場所がちょっとしたカフェになっていることに気づいた。
確か、空港の外ではスウェーデンkrが使えないんだよなぁ(外はデンマークだから)、と思いながらカウンターのお姉さんに聞いてみると、やっぱりデンマーク通貨しか使えないという。
2年前のデンマークkrの使い残りがまだ少しあったのでありったけ出してみると、ちょうど一番安いスパークリングウォーターが買えるぶんのデンマークkrがあったのでお姉さんとおぉ~と驚いた。
スツールに座って空港内の様子を眺めていても、チェックインの列は全く縮まらない。
私が乗るスカンジナビア航空の15:45発デンマーク-日本直行便は、2007年の最初の便なのです。
お正月の4日間は直行便がなく、乗り継ぎになるので私は直行便の運行に合わせてこの日の帰国に決めたのでした。
もしかして、デンマーク-日本間だけじゃなくて、他の直行便も今日が初フライトなのかもしれないなぁ、とぼんやり考えていると、すぐ近くの窓際のテーブルにお母さんと女の子が座った。
お母さんがレジに飲み物を買いに行くと、キラキラの金髪に真っ白く透き通る肌の小学校低学年くらいの女の子が私の顔をじっと見つめる。
あぁ、まただ~みんなアジア人の顔が珍しいのかな?
私がにこっと微笑むと、その少女も心底うれしそうに微笑んだ。
逆光を浴びたその笑顔がすごくキレイで見とれてしまい、しばし二人で微笑み合っていた。

ふと時計を見ると、既に13:30過ぎ。
列はまだ長いものの少し短くなった気がするし、そろそろ私も並ばないと空港内でゆっくりできなくなってしまう。
並んでいると、ちらほら日本人がいる。
いままでほとんど見かけたことがないけど、さすが新年初の直行便。 ひたすら辛抱強く並んでやっとチェックイン。
カウンターのおばさんは少し苛ついている様子で、私がスーツケースを台に乗せると「ずいぶん重いわね。手持ちの荷物は?それ(方掛けバック)だけ?」と言うので「そうです」と答えると、じゃあいいわよ、しょうがないわね、みたいな感じでブツブツ言っていた。
おばさんはてきぱきと私の荷物に" Heavy "のタグを付けた。
うわぁ、車輪が壊れてるから重く感じるのかなと思ってたけど、実際重かったんだ~とびっくりしながらチェクイン終了。
よく見るとタグに23キロって書いてあるけど、確か20キロまでだったような気がする…。
でも、その後重量オーバーの請求が来ていないので、おばさんが大目に見てくれたのかしらん?

厳重な出国審査(液体持込み禁止)を終え、空港内に入るとあと1時間しかない。
免税店で香水を買ったり、リニューアルした空港内を見て回っているとあっという間に搭乗時間。
今回もまた空港内のカフェでのんびりできなかったぁ~お昼食べてない~と唇を噛み締めつつ搭乗口へ。
待合室はすでに大勢の人がいて、半分は日本人。
久しぶりに見るたくさんの日本人に、なんだかがっくり…もう日本に着いちゃったみたい。
ため息をつきつつ、空いている席を見つけて売店で買ったビヨンセが表紙のELLE(US)を眺めた。

機内に入ると、私は窓際の2人シートの通路側。
隣の窓際席にはスウェーデン人のおじさんが座っていた。
まずは上映している映画をチェック。おぉ~今回は見たい映画が目白押し。
ケイト・ハドソンの新作と、”40歳の童貞男””ミランダとミランダ”などなど。
今回音楽がいまいちだったので、ずーっと映画を観ててほとんど眠らなかった。
特に”40歳の童貞男”が最高で2度観た。

それにしてもお腹空いたよ~とご飯が来るのが待ち遠しかったので、カートが出て来たときはうれしかった。
しかし、乗務員のスウェーデン人男子(美形)が普通の機内食ボックスを私に差し出す。
私は今回もベジタリアンミールを頼んでいたので、「あー、私はベジミールを頼んだのですが…」と言うと、陽気な美男子は「Hum…What's your name? 」と私の名を聞てから「その名前はありませんでしたよ~!魚なら食べられます?はい、じゃこれ!」と明るく普通の機内食をまた差し出した。
チェックインの時に確かめなかったからかなぁ…カウンターのおばさん、忙しくて苛ついてたしなぁ。とがっかりしながらも、初めての普通食体験だったので「まぁこれもいいか」と思い直した。
ところが、ところが、この機内食が思いっきり不味かった!!
どんな料理だったのかは忘れたけど、味も、口触りも、とにかく不味かった。
確か、味付けが大雑把に濃かったのは覚えてる。
ベジミールはいつもそれなりにおいしいのですごくがっかりだった。
今度は、デンマークでのチェックインの時も確かめるのを忘れないようにしようと思った。

帰国の便では、機内食が2回出ます。
1度目の機内食がうんざりするほど不味かったので、2度目のごはんも憂鬱だった。
2度目の機内食が配られているとき、私のテーブルに女性の乗務員がぽいっと機内食ボックスを置いた。
ふと見ると、ボックスに”ベジミール”のステッカーが貼ってあり、しかもそのステッカーには私の名前が印字されているではないですか!
”印字”ですよ。てことは、はじめから、私のベジミールはこの飛行機に乗せられていたのでは!?
「あなたの名前はありませんでした」って言わなかったっけ!?
お詫びのひとこともないの!?ていうか1度目の私のベジミールはどこに?
実を言うと、間違えられたのはこれが初めてじゃない。
前も何度か普通の機内食を配膳されて、その場で「私、ベジミールなんですけど…」と言うと「あっ、すみません!(この席だったの忘れてた!)」と毎回変えてくれていたのです。
完全に忘れられたのは今回が初めて。
次に同じようなことがあったら、日本人乗務員を呼んで確認しようと誓った。

マルメの駅で感動的な別れがあり、帰国の飛行機の中で怒ったり呆れたり、まぁ機内では隣のおじさんと心温まる交流などがあったりしてとうとう日本へ戻ってきました。
今回の旅行は3週間という長旅で、その間にいろんなものを見たり聞いたり体験して、かなり充実した旅行でした。
そして改めてスウェーデンが好きだ、と再認識した旅でもあります。
今は英語の上達が目標だけど、いずれスウェーデン語も勉強したい。
欲を言えばスウェーデンに住んでしまいたいところですが、それは現実的に難しいので、また時々スウェーデンを訪れたいと思っています。
「どうしてそんなにスウェーデンが好きなの?」と言うひとが、この旅行日記を見て、少しでもスウェーデンの良さをわかってもらえたら幸いです。
またね!