2007年1月1日-スウェーデンの車窓から~


2007年1月1日。いよいよストックホルムからマルメへの移動。
同じスウェーデンの国内なので、今回初めて長距離電車に乗ることにしました。
X2000という特急でストックホルム中央駅14:20出発→18:46マルメ着。ストックホルムから南へ、約4時間半の旅。
あらかじめSJ(スウェーデンの交通機関)のサイトでチケットの予約をして、ストックホルム到着後に中央駅のカウンターで受け取りました。
受け取る時に席の指定もできます。
私はやっぱり窓側で!
しかしながら、私は前日大晦日に外ではしゃぎまわったため、風邪が悪化してものすごくだるい。
おまけにすでにスーツケースが重すぎて、動かすのにかなりの体力がいるので大変だった。
ホテルをチャックアウトしてどうにかこうにかスーツケースを押しながら、道を渡ろうとふと顔を上げると、道の向こうで目をまるくしている男性と目が合った。
すごく驚いた様子で「大丈夫!?手伝いましょうか?」とわざわざ道を渡って来てくれる。
駅はすぐそこでものすごく申し訳ないので「あっ大丈夫です!すごく重いけど駅はそこだし。ありがとうございます。」と言うととても心配そうに見届けてくれた。

私は風邪をひいて熱が出ると、必ずアイスを食べたくなります。
ストックホルム中央駅に着いて電車のホームを確認すると、早速キオスクでアイスを購入。
パッケージの写真が真っ黒だったのでダークチョコのアイスかな?と思って購入したところ、開けてみるととってもクセのある不思議な匂いが…
これは…甘草(リコリス)の匂い!そう、リコリスのアイスなのでした。
うわー、すごいの買っちゃったなぁ…とがっかりして食べてみると、これが意外に美味しい。
バニラアイスの周りに黒い甘草のコーティングがしてあって、なんだかチョコミントみたいなのです。
食べていくとどんどん味にハマってきて、しまいには「もうひとつ食べたい」とさえ思いました。



ちなみに、スウェーデンやデンマークは、発車する全ての電車が全部まとめてテレビ画面のようなモニタに表示されます。
なので、そのモニタを見て時間と列車名で自分の乗る電車の出発ホームを確認します。
ホームはその日によって変わるらしく、チケットには書いてないのです。
私は11番ホーム。電車の旅は初めてなのでわくわく~。


早く駅に到着してしまったので、とりあえずホームに上がってみると、曇り空のうえ風が強くてすごく寒い!
こりゃたまらん~とまた地下に下りて本屋やコンビニなどでぶらぶらしてみても、早過ぎたせいで時間がもたない。
しかも風邪を引いているのでうろうろすることが既に結構辛い。
もうめんどくさい。とホームで待つことに決め、ホームの風避けエリアの椅子に座って待つ。
他にも立って待っている人が多いけど、みんなじっと耐えている。
うーん、今や”忍耐”という言葉は日本人よりもヨーロッパの北の人のほうが持ち続けているのかもなぁとなんとなく思う。
早く電車こーい。


私の長距離列車のイメージは、発車の10分くらいにはホームにいて、ゆっくり出発を待つというものだったけど、X2000は発車時刻の2分前にゆうゆうと音も無く静かにやって来た。
普通の電車と同じ感覚!
しかも長距離なのでみんなスーツケースやバックパックなど大きい荷物を持っているから、乗車に時間がかかる。大丈夫なのか!?
なぜかこの特急電車は普通の電車よりもドアが狭く、急な階段が3段もある。
私の前に並んでいたおばさんはカートの他に大きな手提げの荷物を持っていて、「あらあら、まいったわ」といった様子で私に苦笑い。
乗る時に私がカートのおしりを持ってどうにか階段を上がれた。


車両の中に入ってみると、ドアの右側にトイレ、反対の左側の広く空いたスペースが荷物置き場になっていた。
このトイレは車椅子も入れるようとても広く、しかも木目調の作りでまるでホテルみたい。
それどころか、車内の椅子も大きくゆったりとして、まるでとても座り心地のいいソファ。
窓の下の手すり?もテーブルも白木で、さらに上の荷物置きも木目調。
全体的にとてもキレイでまるで飛行機のビジネスクラスみたい。
もう、これほどくつろげる電車には乗ったことない!と感動。
と、感動もつかの間、みんながどやどやと荷物を置いたり席を探している間にせわしなく電車が発車したのだった。

電車はみるみる加速し、ストックホルムの景色がどんどん流れて行く。
あいにくの曇り空だったけれど、広い空と波打つ水面、見慣れた建物が容赦なくどんどん過ぎて行く。
とてもとても名残惜しくて、もっとゆっくり走ってくれ~と思ってしまう。
そうしているうちに、どんどん緑が多くなり、森や草原の景色へ変わっていく。
ところどころに牧場があり、その真ん中にぽつんぽつんとかわいい赤い家や小屋が現れる。
時々、忘れた頃にちょこんとパステルカラーのこじんまりした家が表れたりして、景色から目が離せなかった。
小さな村の脇を電車が通ると、黄色や赤や青のおもちゃのおうちみたいな家がぽこぽこ建っていて、「ここで降ろして!」と叫びたいほどかわいいのだった。
次第に日が暮れはじめ、外の景色も見えなくなってきた。


途中でいくつかの駅に停まると、ちらほら人が乗ってくる。
ストックホルムを出発した時には半分くらいだった空席が埋まってく。
私の隣にはまだ人が来ないので、いまのうちにと食堂車へ向かう。
私はカフェテリア式の食堂車を想像していたのですが、実際はコンビニみたいで棚にサンドイッチやお弁当、飲み物類、お菓子類が並んでいて、レジで買って椅子で食べるというものだった。(レンジもセルフ)
がっかり…私の勝手なイメージなんだけどさ。
サンドイッチとヨーグルトドリンクを買って食べようとしたら、カウンターでは携帯でおしゃべりに夢中の女性と食事中の男の子、ソファは二つあり、それぞれパソコンに夢中の女性とゆっくりと食事しながらワインを飲みつつ読書している男性。
さらに壁沿いの椅子には日本人のグループが関西弁で「おーここでええやん、みんなでここに集まろう!」と言って食べるでもなくたまっているのだった…。
サンドイッチのプレートを手に、立ち尽くす私。
仕方ない、相席させてもらおう…と思ったら、ちょうど読書中の男性が私を見て「どうぞ」と目配せしてくれた。
こういうさりげない親切さがヨーロッパの男性は上手だなぁといつも感心する。そしていままでに何度も助けられている。
周りを観察しつつサンドイッチを食べ終わり、戻ろうと席を立って男性にお礼を言うと、「You are welcome.」とそっと言いいながら”まいっちゃうね”とでも言いたげに周りをぐるっと見て微笑んだ。
ちょっと愉快な気分になって食堂車を後にしました。

席に戻ってくつろいでいると、しばらくして私の隣にも人が座った。
スウェーデン人らしいその女性は手慣れた感じで荷物を上に上げて座ると、テーブルを倒してパソコンでDVDを見始めた。
こういう人たまに見るけどかっこいいなぁ~といつも思う。
心地よい椅子も手伝って、風邪っぴきの私はぐうぐう寝ていたのですが、気がついたら”ALVESTA”という駅に停まっていた。
味のある小さな駅だなぁとぼーっと外を眺めていたけど、やたら長く停車している。
ホームに見える出発時間は既に過ぎている。…???
不安になってきたとき、いきなり車掌さんと思われる男性が颯爽と車内に表れ、スウェーデン語で何か説明をしている。
全くわからなかったけど、みんなが動揺している様子もないのでたいしたことではないんだろうなぁと思った。
それにしても、30分以上経っても停まったまま…まさかこのまま走らないってことはないよね?
すると、しばらくしてアナウンスが流れた。
今度は、周りが少しざわめき、隣の女性も携帯で「いまアルベスタにいるの」というようなことを話している。
私は状況がわからないだけに、不安が募る。
2度目のアナウンスが流れたときさすがに我慢できなくなって、すぐさま隣の女性に「すみません、いまのアナウンスは何を言っていたんですか?」と英語で話しかけてみた。
女性が顔を上げてこちらを見ると、その女性はブリトニー・スピアーズそっくりの美少女だった。
(キラキラした絶頂期の頃の)ブリちゃんそっくり!!と衝撃を受けている私に向かって、ブリちゃんは丁寧に英語で説明してくれた。
この先の線路で、トラックが荷台に乗せていた荷物(何なのかは聞き取れなかった)が落ちて線路にばらまかれてしまい、キレイにしてからでないと出発できないということだった。
「でも、6時に出発予定だそうです。」時計を見ると、あと10分くらい。
聞いて良かった~とほっとした。
安心しつつ、フィンランドで購入したムーミンの本を読みながら待っていると、予定の6時を過ぎても出発する気配がない。
遅れてるんだなぁ…とため息をついていると、またアナウンスが。
アナウンスが終わってブリちゃんを見ると、待ってましたとばかりに「今のは、除去に時間がかかっているからもっと遅れるそうで、6時半に出発予定になったそうです。」と教えてくれた。
もう、話している顔が本当にものすごくかわいくて、ブリちゃんかわいい~と内心にやにやしながら聞いてました。
さらに「あなたはどこまで行くんですか?あぁ、マルメなら終点だから大丈夫。」と言うので、なんでだろう?と思い「あなたは?」と聞くと、「私はイエーテボリまで行くから途中で乗り換えなんだけど、もう乗り換え電車に間に合わないのでタクシーで行くことになるみたいなんです。」と肩をすくめていた。
しかしながら、予定の6時半になっても電車は動かず、結局7時をだいぶ過ぎてようやく電車が再び走りはじめたのでした。


電車が走りはじめて少し後、車掌さん?が回ってきて、乗客ひとりひとりに声をかけている。
私にもスウェーデン語で何かを話しかけてきたけど、わからなくて「I'm…(sorry)」と言いかけると車掌さんとブリちゃんが同時に話しだそうとして息をのみ、3人とも一瞬固まってしまい、直後に3人であははと笑ってしまった。
優しさ交差点 in スウェーデン。
改めて車掌さんが英語で「あなたはどこへ行くんですか?切符はあります?」と聞かれたので「マルメです」と言いながら切符を見せると、前にブリちゃんに聞いたとおり、マルメは終点なのでこのままで大丈夫ですよ、と言ってくれた。
しばらくして隣のブリちゃんがいそいそと降りる用意を始め、あっという間に席を立った。
電車はまだ減速もしていなかったので私は驚いて席を離れ始めているブリちゃんに慌ててお礼を言った。
ふと見ると、既に他に何人も出口に向かって降りる準備をしていたので、どうやら乗り換える予定だった人のタクシー争奪戦が待っているのだなと思った。
ゆっくりブリちゃんにお礼ができなかったのが心残りだった。


その後もいくつかの駅に停まり、ぽつりぽつりと人が降りて行く。
ようやくマルメ中央駅に着き、時計を見るともう21時を過ぎていた。約3時間遅れでマルメに到着。ふう~
ゆっくりと席を立つと乗る時にカートで苦労していたおばさんがいた。 やっと着いたわね~とおばさんが疲れたように笑う。
ホームに降りると人もまばらで寂しい雰囲気。
みんなでもくもくと駅構内へ向かう途中、おばさんの旦那さんらしき男性がホームの途中までお迎えに来ていた。
スウェーデンはじめ北欧は駅に改札がないので、送り迎えの人がホームにいたりする。
長旅で疲れた後に誰かが迎えに来てくれていることが、なんだかうらやましかった。