ELITE HOTEL SAVOY

電車が3時間近く遅れ、暗く人気のない駅を出ると冷たい強風が吹き荒れていた。
途中で風に何度も立ち止まりながら道をじわじわ進む。
タクシーのおじさんがじっとこちらを見つめているけれども、私の目指すホテルは駅前の運河を挟んだすぐ向かい側にあるのでした。
ふうふう言いながら、どうにかスーツケースを運びホテルにたどり着いた。
今回のホテルは”ELITE HOTEL SAVOY”。4つ星ホテルです。
旅行の計画を立てているとき、いざ年始のホテルを予約しようとネットであれこれ調べたところ、なぜか元旦から軒並み満室…。
日本人の感覚からすると、首都などの大きな街ならまだしも地方都市に正月から観光もないだろうと思ってしまうのですが、なぜか大きなホテルがみんな満室。
どうしよう!と小さいホテルにもメールで問い合わせたりして数日ネットで探していたところ、ひょっこりこのホテルに空室が現れた。しかも激安で!(4泊で1980sek、約35.640円。)
ここしかない!今しかない!とすかさず予約をしたのです。
なのであまり予備知識もなく(もともとオフィシャルサイトにもあまり説明がなかった)、少し不安。
"地球の歩き方"によると、1862年に建てられた古いホテルらしい。でもまぁ4つ星だし…。

ぐったりと疲れて中に入ると、思ったよりこじんまりとしたロビーだった。
しかしながら、ガイドブックに書いてあったとおりに年期のあるホテルなんだなと思えるほどの重厚な内装。
おぉ~と少し胸をときめかせながら小さなフロントへ向かい、お姉さんにチェックインを頼む。
カードキーを受け取ってエレベーターに乗るためボタンを押すと、珍しく自動ドアだった。
しかも、横にスライドするドアじゃなくて、ギイ~と普通のドアのように開いた。うーん、なんかかっこいい(笑)
でも部屋のある階に着いたら自動ではなくなって、やっぱり自分で開けるのでした。
エレベーターを降ると、部屋までの廊下がやたらゴージャスで思わず笑ってしまった。(中央)
広くはないけど、清潔でなにしろエレガントな内装。
階段なんてシャンデリアとステンドグラスです。(右)
こんなん見せられたら、いやでも部屋に期待してしまうではないですか!

部屋に着いてみると、ドアに禁煙マークがあった。がーん…
宿を確保することに夢中だったので、喫煙室を指定するの忘れてた。
とりあえず中に入ってみると、すごく狭い部屋にでかいクイーンサイズのベッドがどっかりとある。
暗いせいか、建物自体が古くて年期が入っているせいか、ちょっとみすぼらしい感じ…。
しかも、窓から外を見ると、すぐ隣の建物の灰色の壁と換気扇しか見えずにがっかり。
もう、無理。と荷物をその場に置いてフロントまで戻って喫煙室に変えてもらった。
やっぱり安いからなぁ、窓の外の景色は期待しないでおこう。

変えてもらった喫煙部屋は同じ階だったので、置きっぱなしにしていた荷物を少し動かして移動する。
部屋に入ると、さっきの禁煙部屋よりもわずかに広い部屋だった。
でも、なんというか、古いんだなぁ…という感想が真っ先に頭に浮かぶ。
カーテンやベッドカバーなどの暗い色彩のせいもあると思うけど、全体的に暗い雰囲気。
ストックホルムのカラフルな明るい部屋に馴れてしまったのか、どうも違和感がある。
まぁこれもマルメという街の個性なんだけど。
ただ、部屋にブランケットが置いてあるのがうれしかった。
しかも部屋の雰囲気に合わせた色合いで、こんな細かいこだわりがスウェーデンらしくて憎い。

部屋のクローゼットがかなりの年代物らしい風情を醸し出していた。
ちゃんと真鍮の鍵までついていて、アンティーク好きが見たら歓喜ものでしょうか。
私は「”ナルニア国物語”のクローゼットみたい!!」とはしゃぎながら疲れも忘れて洋服をおさめました。
右上の棚には枕がふたつ用意されていて、案内書に”お客様の好みで自由にお使いください”と書いてあった。
部屋を見ていくうちに、最初の印象よりもこのホテルが好きになってきました。

とりあえずくつろごう~とタバコを取り出すと、灰皿がない…
そういえば、予約時にちゃんと確認していたお茶の道具もない。
案内書を読むと、ティーメイカーを希望の方はフロントまで申し出るように書いてある。
なんだよ~とため息をついて再びフロントへ。
愛嬌のあるラブリーなお姉さんに「すいません、灰皿をもらえますか?と言うと、あぁそうよね!ちょっと待ってくださいね、と裏へ消えた。
お姉さんは「ごめんなさい、灰皿が見当たらなくて、これ使ってもらえますか?」と緑のキャンドルスタンドを差し出す。
「キャンドルスタンド!これ使っていいんですか?」と笑うと、お姉さんも笑って「もちろん!こんなのですみません」と笑った。
それと、ティーメイカーも貸してもらえます?と言うと、「え?ティーメイカー?」と怪訝な顔をする。えーっと、ポットです。うーん、お湯を湧かす道具で…と言うと「あぁ!うーん、ちょっと待ってもらえます?」とまた裏へ消えた。
フロントの裏でお姉さんがあちこち歩き回り、何やらガチャガチャと音がして、しばらく待った後に現れた。
「はい、どうぞ!」と出されたお茶の道具を見ると、いかにも”今そのへんにあったものをかき集めました”という感じでごちゃっと載せられていた。
不快に感じるよりも、むしろ人間味を感じてなんだかじんわりと暖かく、笑いがこみ上げてきた。
よく見ると、お茶(もちろんリプトン)もいろんな種類がたくさんあり、コーヒー(もちろんネスカフェ)も粉のミルクもたっぷりと入れてくれてた。
こんな真夜中にちっとも面倒がらずに用意をしてくれてうれしかった。
あぁ、これだからマルメって街が大好きなんだよなぁ。

毎回期待と不安でいっぱいのホテルの朝食。
ELITE HOTEL SAVOYの朝食はと言うと…うーん、判定が難しいところ。

一階のレストランでビュッフェ式の朝食なのですが、ここは意外にもシリアルの種類が少なかったので残念。
でも今回の旅では一番甘い物が充実してたなぁ。
ペストリーやクッキーの種類は豊富で、しかも美味しかったので子供達が喜んでました。
食べ物自体はまぁまぁ種類もたくさんあったし、テーブルも清潔。
ただひとつ大きな問題で個人的に困ったのがレストランが寒かったこと。
外は強い風が吹いていて、レストランは大通りに面しているうえ、入り口のすぐそばだからかどうにも寒い。
私が風邪をひいていたせいかもしれないけど。
もー寒くてしょうがないのでダウンを着て食べたりしてました。

バスルームは床暖房。寒さの厳しい国なので、ホテルのバスルームはほとんどが床暖房装備なので快適。
ここのバスルームは狭かったけど、結構使いやすかった。
シャワーの水が飛び散らないように、シャワーカーテンの代わりにガラスをスライドさせます。
ちなみに、このホテルにも無料サウナがあるのですが、私は風邪を引いていたので残念ながら利用できませんでした。
そうそう、私はマルメ滞在中に風邪を引いていたので、1日だけホテルに籠りました。
薬を飲んでひたすら寝て、パジャマもシーツもカバーも汗でびしょびしょ。
何度もTシャツや下着を取り替え、濡れたシーツの上にはバスタオルを敷き、バスタオルも濡れると取り替える、というのを繰り返していました。
そんなとき、昼過ぎにドアを叩く音がして「ハウスキーピングです。入ってもよろしいですか?」という男性の声がした。
ブランケットをはおり、ドアを開けるとインド人らしき男性が「あっ、すみません、お休みでしたか?」と言うので、「風邪を引いているんです…なので、タオルとシーツだけ変えてもらえますか?汗で濡れてるんです」とお願いしてみました。
男性スタッフは「わかりました。変えるだけで、掃除はしませんね…」と、控えめな態度で、しかしながら手早く、ぱぱぱぱっと変えてくれた。
しかも、後で気づいたら減っていたトイレットペーパーもちゃんと変えてくれていた。
終わると、「Thank you,madam.」と丁寧に言うと、ぺこりと挨拶をして去って行った。
一部始終をぼーっと眺めていて、なんてきちんとしたスタッフなんだろう、と感心してしまった。
来たところから去るところまで、丁寧で謙虚できっちり仕事をする。
教育が行き届いているのもあるだろうけど、その人柄がいいんだろうなぁと思った。
こういうちゃんとしたスタッフがいるホテルは素敵だなと改めて感じました。