ヨーテボリへの旅行が近づいてきた9月下旬、私の大好きなアーティストJonsiが久しぶりにツィートしました。
『 a fully orchestrated version of GO will provide the score to upcoming dance show 』
(オーケストラバージョンのGOは新しくはじまるダンスショウのバックミュージックに使われます)
オーケストラバージョンのGO!? GOというのは、Jonsiのアルバムのタイトル。
しかもMalmöはスウェーデンの街で、ヨーテボリからそんなに遠くない。早速ホームページを見に行ってみた。
スウェーデン南部の街、MalmöのオペラハウスでフルオーケストラバージョンのJonsiのアルバムGOの曲をバックミュージックにダンスパフォーマンスが上演されるらしい!
しかも公演期間が私のヨーテボリ滞在とまるまるかぶっている。
これは行くしかない!ということで早速チケットを予約。 マルメオペラのサイトを見たら既に半分以上予約済み。急いで予約した。

悩みに悩んで、11/3日曜日の公演を観ることにした。
席種も3種類あったけど、いい席はもうほとんどなかった。
できるだけ真ん中よりで260kr(約4,000円)の席を予約。中間の値段の席。
ほんとに北欧はチケットが安いなぁ。

ヨーテボリからマルメまで電車で片道約3時間。
公演は16時からなんだけど、帰りの電車は大丈夫か…。
帰りの電車のチケットを購入するために、マルメオペラのオフィシャルにメールで公演終了時間を聞いてみたら、 とっても親切でフレンドリーなメールが返ってきた。
休憩を入れても1時間45分らしい。
ということは18時前には終わるから、18時過ぎの電車に乗れそう。
早速SJ(スウェーデン国鉄)のサイトで電車の往復チケット購入。
片道323krで、座席指定が30kr、片道合計353kr。往復で706kr、約10,600円でした。
11/3、日曜日。9:40にヨーテボリ中央駅を出発する電車に乗ってマルメに向かいます。
帰りが遅くなるので、前日にホームステイ先の奥さんと夫君に話したらすっごくびっくりされました。
「マルメに日帰り !? え、何で?日曜だから店も開いてないし、何しに行くの?」
片道3時間だもんね、そりゃ驚くよね…。

今回はテーブル席の窓際を予約。広々していてとっても快適。
でも天気が良くないので あんまり景色が映えない…。
森が多いので次第に飽きてくるんだけど、よく見たらもみの木の森だった。
「わぁ〜クリスマスツリーの森!」と少しテンションあがった。
4人席の私以外の乗客は全て女性。
それぞれ一人で、向かいが若い金髪女性、私の隣が私と同じ年くらい。斜め前が白髪でかわいらしいおばあちゃんでした。
私以外は全てスウェーデン人。普通におとなしく本を読んだり携帯いじったり寝たりして過ごしていました。
ところが、私たちの席のすぐ近くにアメリカ人のかたまりが乗ってたんです。 研修中だかの女子生徒のグループと、偶然乗り合わせたらしい若いビジネスマン達。
3時間ずーっとしゃべりっぱなし。時々大きな声になったり、最後のほうは音楽の話で携帯か何かで音楽を流してキャッキャしている。
以前、スウェーデン人は日本人と同じく公共の場所では静かにするのを好む。と読んだことがあります。
私の向かいのブロンド女子もおばあちゃんも、心底うんざり。という顔をしている。
決めつけちゃいけないとは思うけど、アメリカ人っていつでもどこでもアメリカ人なんだなぁ…と思った。
12:51にマルメ中央駅に到着。
お腹が空いたので中央駅のなかでランチをとることにしました。
マルメ駅構内にはいろんな種類のお店があって、イートインも持ち帰りもできます。
タイ料理の店があったのでそこに決めた。
タイチキンカレー!
山盛りでこんなに食べられるかな〜と思いつつも、めちゃくちゃ美味しそうで気分が上がる!
見た目同様、めちゃおいしい…。日本で食べるタイカレーと変わらない。
カウンターの中のアジア系の男性がすっごい無愛想だけど、ここにして良かった。
体もあったまったし、お腹もぱんぱん。
しまった、ぱんぱん過ぎて苦しい。
マルメ中央駅が出て通りの反対側の観光案内所へ。
マルメオペラまでの行き方を聞くと、「歩いて10〜15分くらいで近いですよ。」と言う。
電車やバスよりも徒歩のほうが早くて便利みたい。
開園時間まで余裕があるので散歩しながら向かいます。
早速Stortorget ストー広場に行ってみると、大きなキリンのオブジェがいた。
反対側に大きなステージを作ってたから、何かのイベントなのかな。
ゆるゆる散歩してLilatorget リラ広場に来ると、デザインショップの前にかわいい動物のオブジェが並んでました。
通りにはポップな垂れ幕もあって、何かのイベントなのかな。

そのお店の脇の入口を抜けると、四方を古い建物に囲まれた小さな広場があります。
ここの正面にあるのがフォルム・デザインセンター Form/Design Center。
マルメで一番お気に入りの場所です。
フォルム・デザインセンターはスウェーデンデザインを展示している美術館のような場所。
中に入ってみると、一階はいろんな国のマンガの一部が大きな布に拡大されて展示れてました。
英語以外はセリフがよくわからないけど、子供向けらしくかわいい絵で見てるだけでもなんとなく話がわかる。
2階の展示フロアではピンクブルーのパステルカラーの飾りが天井から下がり、子供達が手作りしたオーナメントもたくさん飾られてる。
来ているお客さんも子供を連れた家族が多い。
ずいぶんかわいいなぁと思ったら、この日はちょうど子供のためのアートフェスティバルの最終日でした。
そのアートフェスティバル、Malmö市のイベントなので、道に垂れ幕があったりかわいい動物のオブジェがあったりしたみたい。
2階にはカフェもあります。ここも居心地がいいのでお気に入り。
真ん中のカウンターでお金を払い、カウンターにあるコーヒーやミルクをセルフで注いで好きな席に座る。
コーヒーを購入してテーブルに向かうと、枯れ葉の上にろうそくが灯されていて秋感満載。
このセンス!めちゃくちゃ好きです。

奥には紙やペン、おもちゃが置いてあり、その脇のテーブルと椅子は子供も座れるように低めになっています。
スウェーデン語のグラマーの教科書を持ってきていたので読んでいたら、子供連れの若いママ二人がやってきた。
2〜4歳の女の子ふたりと男の子ひとり。3人ともよちよちしててかわいい〜!
壁際のお絵描き用紙に向かってそれぞれもごもご言いながらお絵描きしたりおもちゃを持ったりしてる。
ママ達が交代で飲み物とマフィンを買ってきておしゃべりしていたら、子供達も加わわった。
みんな小さいのにうまいこと食べたり飲んだりしてるな〜と感心!(子供はパックのジュース)
子供達にはママ達のおしゃべりはおもしろくないらしく、またそれぞれおもちゃで遊び始めた。
かわいい〜!!!!と心で悶絶していたら、一番ちいさい子がとことことこちらに歩いてきて、にこ〜として照れながらママのところへ帰ってった。
ライブパフォーマンスの時間が近づいてきたのでオペラハウスへ向かう。
地図を見る限り、オペラハウスまで簡単な道のりだけど、私はものすごい方向オンチなので途中で道を聞いてみた。
年輩のご夫婦が近くにいたので地元の人だろうなと思い、聞いてみたら、「あ、"The Feeling of Going"?それなら私たちも観に行くの! 一緒に行きましょう」と言ってくれた。
年輩のお客さんもいるんだ、とちょっとびっくり。
この"The Feeling of Going"という公演は、イギリス人振付け師ベン・ライト Ben Wrightによるモダンダンスの公演。
ベン・ライトはJonsiのアルバム『Go』にインスピレーションを受け、ダンスパフォーマンスを創作してしまったのです!
私の想像では、Jonsiのファンかモダンダンスのファンが観に来ているだろうな、と思いました。
そしてそのファン達は若い人が多いだろうなと思ったんです。
少し進むと、開けた交差点に出た。
ご夫婦のおばあさんが「ほら、あの向かいにある建物がオペラハウスですよ。」と言う先を見ると、 大きなオブジェがひとつあるだけの大きな広場の向こうにホールのような建物が見えた。
近づいてみたら、オブジェに火が灯してある!
写真だとまだ空が明るいのでわかりにくいけど、暮れてくるとゴージャスでかっこよかった。
しかも、正面入口の上の掲示板に"The Feeling of Going"、"本日16時開演"と表示されていて気分が盛り上がる。
入口にスタッフが立っていて、プリントアウトしたチケットを差し出すとちらっと見て「Thank you!」とひとこと。
それだけ?
入っていいんですか?と聞いたら「もちろん。」とにっこり。
ライブハウスならともかく、ホールでもこんなにシンプルなんて、日本の物々しさ(チケットの半券を渡し、バッグの中を見せて、 カメラを預けて、チラシの束を受け取って…)とは比べ物にならない。
中に入ると、右側にグッズのお店とバーがあり、正面のホールにクロークのカウンターがあります。
コートとバッグを預けて、劇場内を散策。
見回してみると、小学生くらいの子供を含む家族連れがちらほら。
どちらかというと女性が多い気もするけど、小学生からお年寄りまで、かなり幅広い客層。
見た感じも、おしゃれな着こなしの若者なんかはJonsiのファンっぽいけど、マダムなどはモダンダンスのファンなのかな。
内装がまた見応えがあり、ふかふかのカーペットが床に敷かれ、両側にあるドラマチックなつくりの階段を上がると 上にもバーがあり、ガラス張りの壁沿いに置かれたテーブルでくつろいでいる。
天井にはシャンデリアがキラキラと輝いて、そんなに広くないのにとってもゴージャスな雰囲気。

劇場のドアが開いたので入ってみて驚いた。
思ったより小さいなということよりも、雰囲気がとってもゴージャス!
座席の背もたれの外側と肘掛けの部分が木でできていて、背もたれの内側と座面は赤に金色の刺繍が施されている。
座席エリアはクラシックなのに、どこか近代的な雰囲気もある。不思議な空間。

ぱっと見で座席がわからなかったので、このへんの列かなというところで端の人に聞いてみた。
おばあさんにチケットの紙を見せながら「この席はこの列ですか?」と聞いてみたら、「どれどれ、あらあら字が小ちゃくて見えないわね。」 と紙を顔に近づけている手がプルプル震えている。
こんなにお年寄りも観に来てるんだ!?とびっくりした。
隣の人に「あなたこれわかる?」なんて連れの女性も見てくれて、その列のもっと奥の席だとわかった。
真ん中に近いのでステージ全体が見渡せる、予想よりずっといい席だった!
音楽ならあらゆるジャンルのコンサートやライブへ行ったことがあるし、演劇も観に行くけどダンスパフォーマンスは初めて。
どんな感じなんだろう…。と思っていたら、演劇とオペラを足した感じでした。セリフの代わりに、歌とダンスで表現。
なので、ストーリーもあります。

主人公は、若いビジネスマン。
へとへとに疲れたようすでスーツ姿で部屋に帰ってきて、夢のなかに落ちて行きます。
たくさんの男女が現れ、生き生きと踊りながら彼の周りを通り過ぎる。
彼はその様子に戸惑いながらも次第に魅かれていき、森に迷い込む。

森には人間や動物や見た事のない生き物がいて(トトロみたいなのも出てきた…)、朝の光も夜の闇もある。
そんななかで、彼は自分と向き合って苦悩したり人生の歓びを感じたりします。
全体を通して、人間の陰と陽すなわち自分の闇と向き合うこと、希望を見つめることを表現しています。
ストーリーもそうだけど、Jonsiのアルバム『GO』をベースに作られたというだけあって世界観が似てる。
森が舞台だったり、動物達が出てきたり、まさにアルバムのイメージ。
すごく雰囲気が良かった。
木が数本立ってるだけなのに深い森の中にいるような演出や季節の移り変わりにも工夫がされていて素晴らしかった。
ダンスはSkånes Dansteaterというスウェーデンのダンスカンパニー。
15人ほど出演していたけど、日本人の女性もいました!
同じダンスを踊っていても、それぞれに個性があって楽しかった。
私は中国人の女性が好みだった。しなやかできりっとしていて、とってもキレイだった〜。
もちろんパフォーマンスもとても良かったのですが、何よりMalmö orchestraによる『Go』の曲たちが素晴らしかった。。
会場がオペラハウスなので、ステージの前下にオーケストラがいるのです。
オーケストラの生演奏でJonsiの曲が聴けるなんて!!Tornadeとか、久々に聴くGo doとか感涙モノ。
Sinking FriendshipsなんてJonsiのライブと同じくらい感動した…。
でも実は、ボーカルはもちろんJonsiでなくマルメオペラの歌手さんたち。
Tornadeとか、男性テノール歌手がめちゃめちゃいい声で歌いだしたときは正直吹き出しそうになったし、 女性歌手もJonsiの澄んだ声とは違うのでやっぱり「うーん…」という感じだったけど、そのへんはステージの演出とダンサー達の動きと 生オーケストラの素晴らしさですぐに気にならなくなった。
約2時間の公演の後は当然カーテンコール。
2度目のカーテンコールでは、インカムつけた裏方スタッフも出てきてびっくり。結構普通のこと?
3度目は総立ちで、女性歌手さんがステージ脇から指揮者のおじさまをひっぱり出してきてて微笑ましかった。
音楽目当てで行ったけど予想以上に素晴らしいショウだったな。本当に行って良かった!!

※これを書きながらダンスショーのパンフレットを探していたら見つからず、他の雑誌と一緒にスウェーデンで捨ててしまったことに気付いて
 ショックに打ちのめされています…。
 帰国時の荷造りには気をつけましょう!