世界一有名な賞、ノーベル賞。ノーベル賞は、物理学、化学、生理・医学、文学、平和、経済学の6部門があり、毎年12月10日にスウェーデンで授賞式が行われます。その中で”平和賞”だけがノルウェーのオスロで選考され、授賞式も行われます。 その理由は、長らくノルウェーの同盟国だったスウェーデンが、ノルウェーへ平和と友好を示したものだと言われています。 オスロには、そのノーベル平和賞の軌跡を展示しているNobel Peace Center(ノーベル平和センター)という博物館があり、スウェーデンのノーベル博物館とはまた違ったノーベル賞の一面を見ることができるのでおすすめです! |
昨年、スウェーデンの首都ストックホルムにあるノーベル賞博物館を訪れてとても感動した私は、オスロのノーベル平和センターへ行くのも今回の旅の目的のひとつでした。 ノーベル平和センターは、オスロ市庁舎のすぐ近く、港のそばにあります。 建物の外観はクラシックで荘厳な建物です。 中に入ると左手にカフェ、右手にグッズショップがあります。 グッズショップの中央にあるレジが受付。 入場券はシールになっているので、よく見える場所、胸のあたりにぺたっと貼っておきましょう。 グッズショップの脇にはロッカーとトイレがあります。 |
私が訪れたときは、写真右に写っているパンフレットのエキシビジョンが行われていました。 "Freedom of Expresshion-How Free is Free?" ”表現の自由ーどんな自由が自由なのか?”というようなテーマです。 革命家や小説家、政治家やアーティストの紹介パネルがあり、中にはマドンナも。 マドンナはミュージックビデオで戦争や独裁国家などもちょっと取り上げたりしているので、あぁなるほどなと思いました。 他に様々な民族の歌も聞くことができ、意外というかやっぱりというか、エミネムの曲もありました。 エミネムは乱暴なほどに自由だったもんね… フロアの奥にある巨大スクリーンでは、何人かの”表現”についての映像が流れていました。 一般的にわかりやすいのは、アウン・サウン・スーチーさんでしょうか。 その授賞式の様子を初めて見たのですが、スーチーさんは当時既に軟禁状態にあり出席できなかったため、息子さん二人が代わりに出席していました。 どことなくスーチーさんの面影があり、でも目元は彫りが深く、イギリス人のお父さんの血かなと思わせる顔。 年齢はわかりませんが、緊張しているのかまだ子供にも見える息子さん達はうれしいような複雑な表情でメダルを受け取っていました。 他に、ニューヨークのど真ん中の道でイスラム教徒に刺殺された映画監督。 この監督はイスラム教徒である女性が家族から虐待を受け、体中に傷があるけれども覆い隠されたベールで家族以外にはわからないという映画を撮った人。 その女性もニューヨークで警察の保護を受けながら現在も戦っています。 あと9.11のテロ後、テロ犯の容疑で逮捕されたイスラム人の大学教授。 無実を訴える家族とともに裁判で戦い、ようやく無実を勝ち取ったもののいまだ刑務所から出られない…。 |
巨大なメインスクリーンのほか、短編映像を流す小部屋も3つあり、最初に入った部屋で映像を見ていたところ、アメリカの黒人コメディアンのショーの映像が流れ始めました。 どうやら相当古い映像のようでしたが、そのコメディアンは黒人でありながら黒人差別をネタにトークショーをしていました。 「ニ○ー、ニ○ー」と繰り返し、馬鹿にする。終いには「黒人が舞台に立ってるんじゃねぇ」などと罵る。 まるで、そうすることでしか笑いを取れないとでも思っているようで、見ているこちらが辛い。 すると、隣に座っていた若く長い金髪の白人男性が涙をこぼした。 途中で”彼は、自由な表現をしているのだろうか?”というような文章が現れた。(私は未だに英文を読むのに時間がかかるので半分くらいは読み切れずに消えちゃった。) その男性はもう見ていられない、という様子で目頭を押さえ、次の映像へ移ると顔を拭いて落ち着いた頃に部屋を出て行きました。 他には自爆テロをする直前に撮影されたイスラム過激派の男性の戦線布告映像などがあり、痛々しくも考えさせられる映像が多かったです。 もうこの一階のフロアだけでも、全部を見ようとするとかなり時間がかかります。 |
この人は”グラミン銀行”の創設者で、バングラディッシュの貧しい地域の女性に低金利・無担保でお金を貸し、生活の向上と自立を成功させました。 このギャラリーでは受賞後に現地を訪れた際のドキュメンタリーも流れていて結構おもしろかったです。 ムハンマドさんってもともと経済学の教授だったんですね~。納得。 来年の今頃は、今年2007年の受賞者のアル・ゴア氏のギャラリーになるのかな? |
これがもうすごくかっこいい。 この部屋はすごく静かで、なぜか厳かな雰囲気があり、皆この部屋ではおしゃべりをしないでそれぞれ見入っていました。 小さなスクリーンがたくさん立ち並び、前に立つとそのスクリーンに入っている受賞者のデータが表示されます。 名前、国、肩書き、受賞理由、その人の言葉。 これも全部見ようと思うと半日はかかってしまう! あちこち見ていたら、日本人の受賞者がいた。 日本人も受賞してたの!?誰!?と思ったら、佐藤栄作でした。 なんでも首相時代に”非核三原則”などの功績で受賞…らしいです。うーん、知らなかった。 見ているうち、突然きらきらとキレイな音がしたと思ったら、それまで青だった電球が波打つように少しずつピンク色へ変わって行った。 まるで草原の草が風になびいているようで、とてもきれいでした。 みんな立ち止まってうっとりと眺めていました。 |
他にも超ハイテクな設備があり、ノーベル賞全般についての情報やや平和賞歴代の名言を表示させられる巨大なモニタがありました。 これは例えるなら、壁一面のパソコン。わかりずらい例え? 壁の一面に、縦1m、横1mくらいあるモニタが3つくらいあり、画面脇についているスライド式の→を動かすと、画面にそれぞれのコンテンツが表示される。 スライド式の→はパソコンのマウスのような役割。 どんどんコンテンツをたどっていくと、受賞者の名言が写真とともに画面いっぱいに表示されます。 Elie Wiesel "The opposit of love is not hate,it's indifference." 「愛の反対は憎しみではなく、無関心である」 この名言はエリー・ウィーゼルはドイツのユダヤ人大虐殺の生き残りなんだそうです。 "...and peace is more precious than diamonds or silver or gold." これはマーティン・ルーサー・キングJr.の言葉で「平和は、金や銀、ダイヤモンドよりも素晴らしく尊いものだ」(私なりの訳なので間違ってたらすんません)。 他にもゴルバショフ、ダライ・ラマなどの受賞者たちの名言を読むことができます。 この設備が本当にすごくて、夢中であちこちいじってました。 男の子ふたり(英語で会話していたのでイギリス系?)が隣のモニタを夢中でいじっていたのですが、しばらくしてそのうちのひとりが「Wow,so cool!」とつぶやきました。 見たところ20代前半といった男の子達でしたが、ノーベル平和賞というちょっと堅苦しくて真面目なものに対して「すっげえかっこいい!」と言わせてしまったノーベル平和センター。 これって、すごくすごくすばらしくて大事なことだと思いました。 とっつきにくいものでも、別の角度から興味を持つこと。 平和に対して、直接ではないけれども「Cool!」と言ったところから何かが変わるかもしれないよね? |
そのなかのひとつ、これは名言が書かれたクロス。 ダライ・ラマの名言で"Happiness is not something ready made.It comes from your own actions." 「幸せは準備されているものではない。あなたの行動から生まれるものだ。」 あぁ、なんて素敵な言葉(涙) クロスの他にポストカードやマグネットやポスターなど、様々な形で刻まれた名言があります。 なんと受賞者の顔をプリントした壁紙もあります。 この壁紙は実際にノーベル平和センターの2階で使われているのですが、赤青黄色緑のドット柄で一瞬わかりません。 でもよーく見ると、小さな受賞者の顔がそれぞれの色でプリントされていてびっくり。 おもしろくてかわいいので欲しかったけど、持って帰るのが大変そうだったのでやめました。 ノーベルの発明品にちなんだ商品ですね。私は食べていないので味はどうなのかわかりません… 右は巨大なエコバッグ。 広げると本当に大きくて、赤ちゃんも入ってしまいそうなくらいです。 しかもエコバッグには珍しく肩からななめ掛けできるので購入。 他にも青赤などの色があり、かわいいです。 |
出口までの階段の吹き抜けには、ノルウェーの子供達が作った平和にちなんだ作品が飾られていました。 クレヨンや絵の具で描かれた絵や貼り絵がキルトのようにつなげられて階段を下りながら眺められます。 そのカラフルな作品達をながめていると、なんだか胸が熱くなりました。 平和って、簡単そうなのにとっても難しい。 |
ノーベル平和センターはそんなに広くはないけれど、内容がぎゅっと濃くてかなり見応えがあります。 あんまり難しく考えずに、もっともっとたくさんの人が訪れるといいなぁと思いました。 |